アレクサンドリアの聖カタリナ ゴシック 魔物装飾 木彫 パネル 15世紀 フランス ／ 15th Century French Gothic Carved Oak Panel St. Catherine of Alexandria

COMMENT/15世紀のフランスで作られたゴシック様式の木彫パネル。
殉教聖人「アレクサンドリアの聖カタリナ」が荘厳な姿で表現されています。尖塔アーチ型に縁取られた聖堂建築的な枠装と、内部に刻まれた聖人像からは、中世の教会装飾の一部として祀られていたことが想像されます。

聖カタリナは、学問と信仰の守護聖人として知られ、キリスト教初期において異教徒の哲学者たちを言論で打ち破ったとされる伝説的女性です。皇帝の命により処刑される際、本来は車輪によって引き裂かれるはずが神の奇跡によってその車輪が砕けたと伝えられ、殉教後には多くの信者に崇敬され、「十四救難聖人」の一人にも数えられました。

この作品においては、カタリナは王冠を戴き、威厳をたたえた表情で描かれています。手には剣を掲げ、その剣先には討ち破った異教徒の頭部が突き刺されています。これは、彼女の知と信仰の力によって異教の思想に勝利したことを象徴しており、同時にその殉教の覚悟を暗示しています。

また上部アーチには、植物装飾に見せかけたユーモラスでグロテスクな魔物風の彫刻が忍ばされており、15世紀ゴシック特有の象徴的かつ寓意的な意匠が随所に見られます。魔除けや悪霊退散の意味をもつこれらの装飾は、単なる装飾性を超えた精神的深みと面白さをこの作品に与えています。

流れるような衣文の彫刻や、荘厳で静謐な表情には、ゴシック後期特有の霊的リアリズムが表れており、教会の信仰空間を豊かに彩っていたことがうかがえます。数百年にわたる時の経過を感じさせる風合いも、この作品の魅力の一部です。
希少な15世紀の宗教木彫として、またゴシック期の造形芸術の美を今に伝える重要な一点です。

•　年代：1400年代（15世紀）
•　地域：フランス
•　素材：木製

SIZE/縦35.9cm　横14cm